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Q8 唾液はどのような働きをしていますか?
唾液(通常1日1.0~1.5・)は透明で、口腔内の3つの主要な唾液腺、即ち耳下腺、顎下腺、舌下腺から分泌される水様の物質で、アルカリ性です。
口腔内に残る食べかすを洗い流し、唾液に含まれるリゾチームやラクトフェリンという酵素の力で細菌の繁殖をおさえています。
ドライマウス(口腔乾燥症)で唾液が減少すると、口腔内の細菌やカビ類が繁殖し、その結果炎症をおこし、虫歯や歯周炎になります。
さらにひどくなると、食物を飲み込むのが困難になり、必要な栄養素を補給することができなくなります。
Q9 ドライマウスは病気ですか?
ドライマウスは、口腔乾燥症ともいいます。
唾液が出ないか、もしくは口呼吸などのため、口が渇く現代病で、潜在患者はわが国では800万人といわれております。原因は様々です。夜は唾液が減っているのでドライマウスになりやすいです。
年期の女性に多くみられます。各種の投薬治療によっても起こります。
ドライマウスになると、口の中が乾燥し、咬むことや、飲み込み、話をすることが困難になってきます。
ドライマウス(口腔乾燥症)とは
“ドライ”とは乾燥の意味で、口の乾燥感が主な症状です。
乾燥した状態が続くと、痛み、味覚異常などが現れることもあります。
ドライアイにも共通しますが、シェーグレン症候群では、指先が冷たい、皮膚が乾燥するなどの症状を伴うこともあります。
ドライマウスと歯周病の関係
歯周病になりやすく、さらに歯周病の症状も進みます
ドライマウスになると身体の免疫能力が下がり、歯周病が進行しやすくなります。
本来、歯茎の表面は唾液によって保護、自浄作用があり、抵抗力を維持しています。
また、歯周病菌は唾液の中の成分である白血球、リンパ球、貪食細胞によって活動を抑えられています。
ドライマウスになると歯周病菌の活動が活発になり、唾液が乾燥するため、唾液中の免疫細胞が歯茎に到達できないため、歯茎が炎症を起こし腫れて、また、歯を取り巻く骨が吸収されるなどの症状が進み、歯周病が悪化してしまいます。
ドライマウスの主な自覚症状
ドライマウスの主な自覚症状について
●口が渇く
●のどが渇く
●唇が乾く
●夜間、口が乾いて目がさめる
●いつも水を持っている
●入れ歯が合わない
●味がおかしい
●ざらざらした感じ
●舌が痛い
●会話がしにくい
●飲み込めない
●パンやビスケットが食べられない
ドライマウスのタイプは?
1. 唾液分泌減少型ドライマウス
唾液腺からの唾液の分泌量が少ない。
シェーグレン症候群、放射線治療、薬剤の副作用、咀嚼筋の衰えなど。
2. 唾液蒸発型ドライマウス
唾液の分泌量は正常ですが、口腔からの水分の蒸発が多い場合にドライマウスが起こります。
口呼吸、鼻疾患、歯列不正などにより、口唇を閉じることが、なかなかできないなど。
朝、起きた時に口腔乾燥がある場合は、睡眠中の口呼吸、歯ぎしり、食いしばり、いびき、無呼吸性症候群などの原因が考えられます。
ドライマウスの原因になる疾患
1. シェーグレン症候群
自己免疫疾患で、涙腺、唾液腺の破壊により、分泌量が減少します。その結果、口のなかの免疫作用が低下し、口腔粘膜の炎症がおこり、口腔乾燥も引き起こされます。
2. 糖尿病
重度の糖尿病では、唾液腺に障害がおこり、口腔乾燥症になります。
3. 放射線治療による口腔乾燥
顎顔面の腫瘍の治療に、放射線治療を行うと唾液腺の機能に障害が生じ、口腔乾燥を起こします。
4. 腫瘍、外傷の後遺症
脳血管障害、腫瘍、手術、外傷による侵襲により、唾液腺の分泌機能に支障をきたし、口腔乾燥になる場合があります。
5. 薬剤による唾液分泌低下
常用薬を長い期間使用している場合におこります。
唾液分泌機能低下のために口が乾きます。主な薬として、向神経薬(向精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬)、利尿薬、カルシウム.拮抗薬などです。
6. 神経性唾液分泌低下
ストレス、自律神経失調症などから口腔乾燥症になることもあります。
7. 咀嚼筋の筋力の低下、加齢によるドライマウス
咀嚼筋を使わないと唾液腺の委縮をおこします。食べ物の硬さの調整や咀嚼の回数を増やすことにより、回復する事もあります。
ドライマウスの治療、対処法
ドライマウスの治療、対処法について
ドライマウスは原因により対処法が異なるため、治療においては診断がポイントになります。糖尿病や薬の副作用など、原因を除去することで、ドライマウスが改善する場合があります。
シェーグレン症候群や放射線治療による唾液腺の障害は、原因療法が確立されていません。この場合、対症療法が行われます。
ドライマウスの対症療法としては、保湿剤の使用、唾液分泌促進薬の処方による「水分の補給」です。
1.人工唾液、口腔ケア用品
ドライマウスでは医薬品として、「人工唾液サリベート」があります。
人工唾液に対し、口腔乾燥をやわらげるために口腔ケア用品として、”保湿剤“ “湿潤剤”があげられます。ジェルタイプ、洗口液タイプ、スプレータイプなどがあります。
2.唾液分泌促進薬
唾液分泌促進薬は唾液腺のムスカリン受容体を刺激する薬です。セビメリン塩酸塩水和物、エボザック、ピロカルピン塩酸塩が代表的な薬剤です。
漢方薬のなかでは、麦門冬湯、白虎加人参湯、温経湯、八味地黄丸などがあげられます。
3.保湿装置(ナイトガード)
ナイトガードはもともと歯ぎしり用ですが、夜間口腔乾燥には有効です。ナイトガードの内面に保湿ジェルを塗布して使用します。
4.ドライマウスの口腔粘膜の炎症への対応
ドライマウスの患者さんは、口腔乾燥に伴う痛みを7割の方がお持ちです。
痛みの原因はカンジダ菌が関与している可能性が高いです。
唾液分泌が低下すると、自浄作用や抗菌作用が弱くなり免疫能力が落ち、カンジダ菌が増加します。
口腔乾燥症では、紅斑性(委縮性)カンジダ症が多くを占めます。
口腔カンジダ症には抗真菌薬を用います。
そして、口腔を清潔に保つことで再発を防ぐことができます。
表V-4 日本で入手可能な保湿剤リスト
サリベート(人工唾液)
サリベートは、シェーグレン症候群による口腔乾燥症ならびに頭頸部の放射線照射による唾液腺障害に基づく口腔乾燥症の寛解に適応があります。使用方法は、通常1回に1~2秒間口腔内に噴霧し、1日4~5回使用します。
唾液分泌促進薬