歯科の口腔漢方治療

Q&Aでわかるいい歯医者2011より引用
2010年06月28日 掲載

歯科における漢方治療の有効性

歯科医師は、う蝕や歯周病などの治療を主に行ってきましたが、近年は口腔を一つの臓器と考え、口腔乾燥症、舌痛症、口臭、味覚障害、口内炎という口腔疾患に対して検査、診断、投薬による治療、いわゆる口腔内科的治療によって患者様の訴えに応えていかなくてはならなくなったと思われます。つまり、口腔内科は口腔を一つの臓器ととらえ、口腔疾患に対して検査、診断、投与などを行います。それゆえ、口腔内科医とは、う蝕、歯周病をはじめ、「口の乾き」「口の痛み」「口の臭い」「味の異常」「タバコをやめたい」などという訴えに対して内科的に対応する歯科医師であるといえるでしょう。

医師でもっとも漢方薬が投与されるのは「不定愁訴」「更年期障害」「自律神経失調症」で、いわゆる原因を断定できない疾患です。口腔の訴えにも似たような症状があります。つまり、口腔乾燥症、口臭症、味覚障害、舌痛症、口内炎の原因不明である場合には、口腔不定愁訴として位置づけることができます。これらの症状の原因は、高齢、ストレス、心身症、更年期障害、多剤投薬による副作用などが考えられ、その改善には漢方薬が有効であることを診察室で実感してきました。

漢方医学は初めから治療医学として発展してきました。漢方は、数千年にわたる効き目や信頼性に関する長い経験に基づいて、理論体系を築き上げ、その理論と患者様の症状に応じて、いくつもの生薬を組み合わせて使うようになっています。

そのため、一つの漢方薬でさまざまな症状を治し、複合的な効果を期待することができます。漢方薬の基本的な考え方は、生体が持っている回復力や免疫力を高めることにあります。この漢方薬の特徴が、口腔不定愁訴症に有効であると考えられます。

最近、歯科診療室に届く患者様の声は、「歯が痛い」「歯茎から血が出る」「喉が乾く」「舌や口が痛い」「口が臭う」「味がおかしい」など多岐にわたってきました。それゆえ、これらの訴えに対応できる歯科医院が増えています。

王 宝禮(おう ほうれい)

【特別寄稿】

王 宝禮(おう ほうれい)
日本口腔内科学研究会会長
大阪歯科大学歯科医学教育開発室教授

▲口腔漢方治療のTOPへ